VOL5 料理や くぅ象 井上さん
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ヘイ!お待ちっ! 情熱ある若者大陸 第5弾! 待望の公開です!
「情熱ある若者大陸」へようこそ!今回は、料理や「くぅ象」のオーナー井上さんにお話を伺いました。
井上さんは神奈川県川崎市のご出身。5年前に移住し、三条市内に料理や「くぅ象」をオープンしました。くぅ象=タイやインドのスパイスを使ったカレーだけのお店、と思われている方、甘いですよ!(笑)
高橋:初めまして。本日は宜しくお願い致します。
井上:宜しくお願いします。
高橋:まずはこちらに来られたきっかけからお聞かせください。
井上:もともと母の実家が下田村で、小さいころから春休みや夏休みに遊びに行っていたんです。楽しい場所というイメージだったんですが、おじいちゃんが入院して病院にお見舞いに行く場所になって。お見舞いに行くときになんとなく、おじいちゃんが亡くなったあとにこの地に来ることはないのかな~という気持ちになったんです。実家は川崎なのですが、私のアイデンティはここにもあると思っていて、亡くなった時にやっぱりこことの縁が切れるのが嫌だな~って。
高橋:下田との関係が切れてしまうことで自分のアイデンティの一部がなくなるように感じられたのですね。そこでなぜカレー屋さんだったんですか?
井上:それも流れがあって。東京で不動産屋に勤めていたんですね。その会社がタイに土地を持っていて、それでタイに行くようになったんです。もともとそういう文化的な言葉とか料理とかが好きで、そこでタイのハーブやスパイスに興味が出たんです。食べることも料理も好きだったので、タイから今度はインドのスパイスはどうだろうみたいに、どんどんハマってしまって(笑)それで東京で本格的にスパイスの勉強をして、アルバイトしながらも料理教室を開くようになって料理人生が始まったんです。
高橋:すごい行動力ですね。よく不動産屋をやめてアルバイトしながらご自分で料理教室を開こうと思いましたね。
井上:もともとあまり計画性をもって動く方じゃなくて(笑)。それで最初の話に戻るのですが、おじいちゃんが亡くなったあとに、こっちでちょっと物件を見てみようかと。そこで見たのが前にお店があった場所なんです。まぁ金額や立地等を考えるとここくらいかな~って。ただ決めたわけでもなく、なんとなく目星をつけていたくらいで・・・そもそも完全に移住しようとも思っていなくて、月の1,2週くらいをこっちで料理教室ができたらな~くらいの甘々な考えでした。そしたらタイに行っている時に不動産屋さんから、「二番手さんがつきましたよ」と連絡があって。じゃあなんやるか!と(笑)。でも料理教室だけでは集客面等考えると難しそうだったので、お店かなと思って、それで一番得意なのがカレーだったので、じゃあ、カレー屋でいきますかと。
高橋:不動産屋さんに背中を押されたわけですね。
井上:それで、不動産屋さんから地域振興課で空き店舗対策補助金があるというのを聞いて、締切りギリギリで申し込みをして始まったというのが、三条でお店を開くまでの流れです。最初からこうしようとか、こうなりたいっていう欲求があったわけではなくて、気がついたらこうなっていましたね(笑)。その時その時の流れというか、気持ちにそっていったらこうなっていたというか。
高橋:成り行きというか運命に導かれてというか(笑)。でもそうやってこのまちに来たわけですよね。では、ここに来て夢が叶ったというか、やりたいことができ始めたな~と思った瞬間はありますか。
井上:もともとスパイスとかハーブ畑の出身なのでそういう料理を出していて、完全に土地の物とか無視していたのですけど、実は最初からすごく違和感がありました。せっかく豊かな土地があっていろんなおいしい食べ物があるのに、それをスルーして、「このスパイスだぜ、このカレー食べてくれ」みたいな感じが・・・
高橋:なるほど。因みにスパイスはどこから購入されるのですか?輸入ですか?
井上:そうですね、みんな外から買っています。今はインターネットでどこからでも買えるので。ただ大好きだった下田のおじいちゃんも人間は「四里四方」の物を食べたほうがいいという考えの人で。四里って一日で行って帰ってこられる範囲なのですけど完全に無視していますよね(笑)。
高橋:インターネットで輸入ですからね。何千里離れたところのものを一瞬で買うという(笑)。
井上:だからすごく違和感があって、それが最近やっと土地の物を出せるようになってきて。ラーメンとおにぎりのセットなんかも出すようになりました。
高橋:ラーメンもやるのですか。
井上:こっちにギスという魚の素材があって、海のウナギと言われていて、関東では珍重されているのですけど。旨みが強くて臭みがないので、その出汁を何かに使いたいなと思っていて、そしたら新潟でラーメンがすごく盛んなのを知って、それをスープに使っています。なので、今は最初のころの「コテコテ」のタイ!とかインドだぜ!というのはやっていないですね。まだそういう印象が強い方もいらっしゃいますが、最近やっといいバランスのところに落ち着いてきたんですよ。
高橋:日本酒も置いてあるのですね。「シンハー」じゃなくて。
※シンハー = 「タイ」の有名な ビールの事
井上:「シンハー」はなくなってしまいましたね。ビールは全部日本のメーカーになっちゃいました(笑)。母が下田出身なので、ハーブとか言いながらも、日本酒とかそういう文化的なものの影響が強いですね。スパイスやハーブもそうですけど、そういう土地に根付いている文化というか、そういうものが好きというのが根本にあって。まだまだですけど、やっと違和感を払しょくできたというか、ここでお店をしている意味というか、そういう点に触れ始められた感じですね。
高橋:そんな心境の変化というか、今のかたちに至るまでに苦労したことはありますか。
井上:最初に地元の野菜を使ったカレーを作ろうと思いまして。ここにいるとわからないかもしれないですけど、関東より美味しいです、やっぱり。素材の味がしっかりしていて。お米もおいしいですしね。土がいいというか。
高橋:そうですよね。僕も東京に住んでいたときに定食屋さんのごはんが美味しくなくて(笑)
井上:こちらに住むとわかりますよね!それで、野菜カレーをだしていたのですが、野菜にお金を払うなんて、というか、あとインドカレーは全部煮込んでルー状になるので、見た目があまり良くないのもあるのか、あまり受け入れられなくて。やっぱり皆さん肉が好きですよね。自分は肉々しいしいものがダメなので、そういうところが苦労しましたね。チキンカレーもありますが、それが売りで始めたわけではないので。中にいる人というか、その土地の人にとって当たり前のものが外から来た人にはすごくいいものだということって中々伝わらないですよね。
高橋:じゃあ、オープンしてから結構メニューが変わっているんですね。
井上:変わっていますね~最初は3つのカレーしかなくて。それからラーメンだったり、おにぎりだったり、今は「うどん」も出しています。
高橋:え! 「うどん」もですか。それはどんなきっかけで?
井上:信州の小川村の「おやき」が有名で、よく行っていて。おやきはその土地のものを使って作る伝統的なものなのですけど、それを第三セクターが入って村おこしをしていて、全国に発信しているのです。そういうものを下田村でやれたらなというところから、地のものをつかったうどんっていいかなと。
高橋:なるほど。うどんは自分で打たれているのですか。
井上:はい。ラーメンも手打ちです。
高橋:ラーメンもですか。凄いですね!
井上:中国では小麦粉を使った料理は一般的で、パンの様なものから麺まで家で作るので私の中で違和感はないですね。父が韓国人とのハーフなので、お正月は日本の料理と韓国の料理が並んでいて、文化的には韓国の方も吸収していますね。しかも実家が焼肉屋なのです。超肉々しいですね(笑)
高橋:肉々しいですね(笑)。でも羨ましいです。
井上:でも、肉嫌いでしたよ(笑)。肉の塊を切るとか気持ち悪いな~って(笑)。ただアルバイトに中国の方がいて、餃子の皮とか作ってくれたりして、そこで粉文化を教えてもらって。だから麺を打つのも普通になりましたね。
高橋:日中韓融合なのですね。政治的にはあり得ない感じで羨ましいですね。
井上:政治的には難しいところもありますけど、そうやって文化的なところで繋がることができたらなという想いもあって、いろいろな国の料理に手を出しているところもありますね。最近は土地の物でもそこで暮している人すら忘れていることが多いじゃないですか。スーパーとかコンビニとかが当たり前になって。梅干しってパックだよね、みたいな。実は梅干しも漬けていて、そういう漬物とかも作っていきたいというのもあるんです。全然スパイスじゃないですけど(笑)。昔からやっていたこともちゃんと生かそうと思って。そっちの方もPRしていいのかなと、やっと自分を俯瞰できるようになってきました。昔はカレー、スパイス、スパイス、カレーみたいな感じでこれを食べて欲しいという感じだったのですけどね。
高橋:やりたいことが広がって、視点も広く持てるようになってきたのですね。ではこのまちでショックだったことはありますか。
井上:一人暮らしであまり社会との接点がなさそうなお年寄りの方が多いなと思っています。多分お子さんは別のところに住んでいたりして。ある日、タクシーから降りてきたおじいちゃんのズボンが脱げていて、おむつが見えていて。なんかもう自分でもどうしようもない感じなのです。他にもよろよろしていて、今にも倒れそうなおじいちゃんがいて、大丈夫ですかと話しかけたら力が抜けている感じでよりかかってきて、でも自分で買い物に来ないと生活ができないという。そういうお年寄りって、実家の方では見かけません。指定地区になっていて高齢者が多い地区なのですけど、それでもそういうお年寄りを間近に見かけたことはなくて。本当にまずいのではないかと感じました。核家族化が進みすぎて、若い世代は家を出て他のところで暮らしていて、一人暮らしのお年寄りがやっと生活をしているというのがこの中心地で起きている。だからこうやっていろんな人たちががんばって若い世代を増やそうとしているのだと思いますし、そうやって魅力的な要素が増えて、燕三条に来たいなという人が増えてくれるといいなと思っています。それで子ども達がここに暮らしたいと思えて、そこに雇用があるという循環がこの中で完結するというところにもっていけるように頑張りたいと思いましたね。それを見て・・・
高橋:私は昼間にまちにいることはなくて、そういう光景は見たことがないのですけど、日常にあるのですね。この取材も若い世代を増やす一助になりたいと思ってやっています。ただ、雇用は少ないですからね。都会と比べたらやっぱり。あとは大学だったり専門学校だったりの進学で県外に出ますよね。大学卒業して就職活動するにも地元でと思う人は少ないかもしれません。
井上:アイデンティの確立が地元でされないとそうならないですよね。私は下田の思い出とかが強くてこうなりましたけど、一緒に行っていた弟は横浜で普通に家庭を持って働いていますから。当然、人によって違うのでしょうけど、ただそういう気持ちの基盤みたいなものが地域で育てられるといいですよね。すごく時間のかかる事なのでしょうけど。
高橋:まずは戻って来る、来ないではなくて、地元は地元で好きっていう感情をね。都会と比べてどうという事でなく。井上さんもこちらで徐々に基盤を作ってきて、移住してきたころよりもいろんなことが見えたり、わかったりしていると思いますが、新しい夢や目標はありますか。やりたいこととか。
井上:移ってみて感じたのですが、本寺小路って周りから閉鎖的な感じにとられている気がするのです。年齢層が高くて、若い人がお店に入りにくい雰囲気があって。だから県央の方のお店に行かれる方が多いようですし。
高橋:開けて見ないとどんな店かわからなかったりしますからね。僕でも知らない店は開けようと思わないです。だったら想像のつく居酒屋の方が楽ですよねぇ。
井上:しかも今は世代交代というか年齢が理由で閉められるお店も多くて。昔からあった一品料理屋も空き物件になっていますし、隣のお寿司屋さんもやめられました。だからと言って大きな居酒屋チェーンがボンボンボンと建っても、ここのまちの良さが生きないのかなとも思います。こちらは会社帰りとかに気軽にお酒を飲んでコミュニケーションをとることが東京より少ないですよね。車社会ということもあると思いますがあまりそういう文化がないように感じます。もっと若い人が気軽に、ほわっと入れるようなお店が増えるといいなと思います。そういう楽しみやお店を発信したいというのが一つですね。
高橋:若い人が気軽に寄れて、コミュニケーションがとれる場ですね。
井上:もう一つは下田のためになる何か。私ができるのはお店になると思いますが。毎日は集客的に無理ですけど、なにか人を呼べるようなお店ができたら思っています。
高橋:下田に外から呼びたいということですか。
井上:外からということもですけど、下田にそういう場所がなくて、家に帰るだけという話を聞くのです。そういう遊び的な要素が何もない場所なので、ほっと一息入れようかと行く場所もない。それが家なのかもしれないですが、気分転換にコーヒー飲み行こうとか、したいと思うのです。私がそうなので(笑)。でもそういう場所がないから下田の人は出るしかない。
高橋:どういったカフェがいいですかね。
井上:加茂に昔の七谷郵便局を改装したカフェがあるのですけど。そこはとてもいい雰囲気で。そういう気持ちが豊かになる場所づくりができたらいいなと思います。少しずつそういうところの価値観を出せたらいいなと。
高橋:こちらのお店にはふらっと来られるお客さんが多いんですか。
井上:常連さんが多くはなりますけど、おもしろいなと思うのは年齢層がバラバラなところですね。60代の料理屋さんの人の隣に20代のカップルがいたりして。しかも自分たちの世界だけで飲んでいるのではなくて、結構お客さん同士コミュニケーションを取って盛り上がっています。そういうのを見ていると可能性を感じますよね。世代が断絶されずに繋がっていくという。
高橋:そういった場所と空間を下田にも、ということですね。インタビューを通してですけど、やっぱり自然とかそこにある文化が好きなのですね。井上さんがそういうものからパワーをもらっている感じがすごく伝わってきました。それでは最後に、井上さんの未来を切り開く力を教えてください。
井上:愛ですね。何事も愛を持って接していればきっと未来もいい方向に向かうと思います。
高橋:やっぱり何はなくとも、愛ですよね!本日は本当にありがとうございました。
井上:ありがとうございました。
色々なことに積極的に挑戦している井上さん。 手打ちで作っている ラーメン と うどん。是非食して見たいですね(´▽`)