~トレンド予測レポート~ 2016年はどうなる? ふるさと納税 専用ポータルの登場で、自治体のPRチャンスが拡大 注目は…

 

~トレンド予測レポート~
2016年はどうなる? ふるさと納税
専用ポータルの登場で、自治体のPRチャンスが拡大
注目は、ヒトと地域をつなぐ“体験型”の特典

生活者の意識・実態に関する調査をおこなうトレンド総研(東京都渋谷区)では、このたび、『ふるさと納税』をテーマにレポートします。 

『ふるさと納税』とは、かつて住んでいた故郷や応援したい地域などの自治体に対して、居住地に関係なく納税(寄附)ができる制度です。

制度自体は2008年に公布されたものですが、2015年に改正地方税法が施行されたことをきっかけに、一気に注目度がアップ。金額に応じて特典を進呈する自治体も多く、各地の魅力的な返礼品も大きな話題になりました。

そして最近では、民間企業が運営する『ふるさと納税』の専用ポータルが登場したり、返礼品として、地域の特産品だけでなく“体験型”の特典を用意する自治体が増えたりと、新たな動きもみられます。

そこで今回トレンド総研では、生活者を対象にした調査結果や専門家のコメント、企業取材などをもとに、これからの『ふるさと納税』についてレポートします。 

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1:【生活者調査】  『ふるさと納税』に関する意識・実態調査
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はじめに、『ふるさと納税』に関する生活者の意識・実態を調べるため、20~60代の『ふるさと納税』経験者500名を対象とした調査をおこないました。

[調査概要] 
・調査名:『ふるさと納税』に関する意識・実態調査
・調査期間:2016年3月24日~3月28日 
・調査方法:インターネット調査
・調査委託機関:楽天リサーチ
・調査対象:20~60代 男女 500名
   ※『ふるさと納税』の経験がある方 (年代・性別で均等割り付け)


◆ここ1年で『ふるさと納税』の制度利用者が急増 

まず、「初めて『ふるさと納税』をしたのはいつですか?」と聞いたところ、「半年以内」(33%)、「3か月以内」(24%)、「1年以内」(23%)などの回答が多い結果になりました。ここ1年で『ふるさと納税』をした人が8割以上にのぼっており、2015年の制度改正後に興味・関心を持った人が多い様子がうかがえます。

続いて、これまでに『ふるさと納税』をした回数を聞いたところ、「2~3回」(35%)、「4~5回」(13%)などの回答が多い結果に。なお、全体の68%と約7割が、2回以上の数字を回答しており、1回きりでは終わらず、『ふるさと納税』の制度を複数回利用する“リピーター”が多数であると言えます。

また、『ふるさと納税』をしようと思った理由を聞くと、「特典(返礼品)が魅力的だったから」(79%)が圧倒的に多く、「税金が控除されるから」(54%)、「自分のふるさとに貢献したかったから」(19%)、「税金の使い道が指定できる制度だから」(17%)、「応援したい自治体に貢献したかったから」(17%)などの回答を大きく上回りました。


◆地域の魅力を再発見するきっかけに・・・“体験型”の特典に注目 

こうした返礼品の中でも、最近は“体験型”の特典に注目が集まっているようで、「『ふるさと納税』の返礼品に“体験型”の特典があることを知っているか」を聞いたところ、73%が「知っている」と答えました。

さらに、「今後、“体験型”の特典を利用してみたいと思う」と答えた人は、69%と約7割。また、「すでに利用したことがある」という人も全体の1割(10%)にのぼっています。

そこで、具体的に「利用してみたい“体験型”の特典」を聞くと、
●「地元の方に案内してもらえる旅行ツアー」(25歳・男性)
●「その地域の有名なお祭りや行事への参加、伝統のものづくりや体験など」(30歳・女性)
●「『ふるさと納税』をしなければ出来ない、限定感のある体驗」(28歳・女性)
●「民間では実現できない、地方自治体ならではのアクティビティ」(48歳・女性)
などの回答があがりました。「ふるさと納税」ならではの、特別感のある体験を望む声が多いようです。

また、“体験型”の特典は、「地域の魅力を発見(再発見)するきっかけになると思う」と答えた人も、79%と全体の約8割にのぼっています。『ふるさと納税』における“体験型”の特典は、地域のさらなる活性化につながりやすいと考える人が多いと言えそうです。


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2:【専門家取材】  『ふるさと納税』の現状と今後について
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続いて、地方自治体や生活者の動向に詳しい、商品ジャーナリスト・北村森さんに、『ふるさと納税』の現状と今後についてお伺いしました。


◆「魅力ある返礼品で納税額を競う」というフェーズから、一歩進みつつある『ふるさと納税』 

2015年の制度改正をきっかけとして、『ふるさと納税』は一気に市民権を得ました。総務省の発表によると、『ふるさと納税』の受入額は、2015年度上半期(4月~9月)だけでも、対前年度同期比のおよそ3.9倍となる、約453.6億円にのぼっています(*)。

そして、生活者の『ふるさと納税』に対する関心が広まった大きな要因と言えるのが、魅力ある返礼品です。先ほどの『ふるさと納税』受入額の大幅な増加は、各自治体が、農水産物や伝統工芸品といった地域の特産品を大きく打ち出し、それらが生活者の興味喚起につながったからこその結果であると言えます。

しかし今、『ふるさと納税』は、「魅力ある返礼品で納税額を競う」というフェーズから、さらに一歩進みつつあります。『ふるさと納税』の認知が定着した今、先を見据えた自治体はすでに、“自治体の強みや魅力をアピールする手段”として、『ふるさと納税』を活用しているのです。 

実際に2015年以降、『ふるさと納税』が市民権を得たことで、民間企業が運営する専用ポータルなども新たに登場しており、自治体のPRチャンスは拡大しています。このように『ふるさと納税』をフックにして、いかに地域の魅力の訴求につなげられるかが、自治体の新たな課題となっています。

*「ふるさと納税に関する現況調査結果について」(総務省・2015年10月23日 発表資料より)


◆注目は“体験型”の特典・・・寄附をする側にとっても大きな魅力 

そしてこうした中で、今後注目が集まっていきそうなのが、“体験型”の特典(返礼品)です。というのも、自治体にとって今重要なのは、『ふるさと納税』をきっかけに、いかに地域のファンを増やすかということ。実際に地域に足を運んでもらう“体験型”の特典は、人と地域の結びつきをより強化することにつながると言えます。 

そして、寄附をする側にとっても、“その街ならでは”の体験ができるのは魅力的なこと。愛知県豊田市が燃料電池自動車の1日貸出をおこなった「ミライ・チャレンジコース」をはじめ、すでに“体験型”の特典に寄附が殺到した事例もみられています。

ポイントになるのは、「納税をしなければ体験できない」というオリジナリティがあるかどうか。民間のサービスにはない、貴重な「体験」を用意できることが自治体の明暗をわけると言えるでしょう。 

また、さらに進んだ自治体は、クラウドファンディング型の『ふるさと納税』も展開しています。こちらも、自治体の課題解決に、直接意思をもってかかわることができるため、“体験型”と同様、ヒトと地域のつながりを深める仕組みとして注目を集めつつあります。 

[専門家プロフィール]
北村 森(きたむら もり)  商品ジャーナリスト
『日経トレンディ』編集長時代から、テレビ・ラジオ番組のコメンテーターとしても活動。退職後、商品ジャーナリストとして活動。原稿執筆、テレビ、ラジオ番組への出演、講演活動などとともに地方自治体と連携する形で地域おこしのアドバイザー業務にも携わる。著書に『途中下車』(河出書房新社)、『ヒット商品航海記』(日本経済新聞出版社 共著)など。


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3:【企業取材】 『ふるさと納税』における新たな展開
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さらに今回は、『ふるさと納税』のポータルサイト運営をおこなう、大手航空会社・ANAのマーケットコミュニケーション部・渡邊勇喜さんにお話を伺いました。


◆今年4月にポータルサイトの運用を開始したANA 

ANAでは、『ふるさと納税』を通じて日本全国の地域活性化により一層貢献するため、2016年4月14日より、ポータルサイト『ANAのふるさと納税』の運用を開始しました。ANAオリジナルの返礼品などもあり、サービス開始直後から、おかげさまで多くの方にご利用いただいています。

当社はこれまでにも、日本最大の国内線ネットワークを活用した様々なプロジェクトを通じて、地方創生に積極的な取り組みをおこなうとともに、地方自治体とも良好な関係性を築いてきました。今回のポータルサイトにおける参加自治体数も、6月には21自治体、9月には約50自治体まで増加予定。12月にはさらに数が増える見込みです。

今まで地方創生を通じて作ってきた地方自治体との関係性と、ANAマイレージクラブ会員をはじめとするANAをご利用いただいているお客様とをつなぐお手伝いができればと思っています。


◆“体験型”特典の企画に注力する自治体が増加、地域へ足を運ぶ人を増やすきっかけとして期待 

事業を通じて、各自治体の担当者様とお話をしていると、『ふるさと納税』を通じて「地元の物産を知ってほしい」というだけでなく、「地元に来てほしい」というニーズが強く感じられます。そのため、ANAでも、航空会社ならではの視点として、「地域への送客を含めた地域活性化」への貢献を目指しているところです。

自治体の中には、観光プロモーションがまだ十分とは言えず、せっかくの魅力が埋もれてしまっているところも多くあります。地域の特産品についても、「お得感」や「高級感」を打ち出すだけで終わってしまっている自治体が少なくないのですが、むしろ重要なのは「背景にあるストーリー」です。『ANAのふるさと納税』は、返礼品や特典にこめられたメッセージやこだわりを受け取ってもらうための場を目指しています。

また最近は、「足を運んではじめてわかる魅力」を伝えるために、“体験型”特典の企画に注力する自治体が増えています。福岡県柳川市の「柳川藩主立花邸での宿泊」などをはじめ、その土地でしか味わうことが出来ない特典は、利用者にとっても大きな魅力にうつるのではないかと思います。市町村のカラーをしっかり打ち出した“体験型”の特典は、農水産物や工芸品といった通常の返礼品以上に、地域へ足を運ぶ人を増やすきっかけになりやすいようです。

同時に、今後注目度が高まりそうなのが「目的型寄附(クラウドファンディング)」です。これは、地域の観光施設の保全や、観光スポットのリノベーションといった自治体の課題解決に対しての寄附ができるというもの。『ふるさと納税』を通して、地域の観光活性化などに貢献することが可能です。

今後、地方自治体においては、納税や観光などを通じて、継続的に応援してもらえるような「地域のファン」を作ることがますます重要になってくると予想されます。ANAでも、『ふるさと納税』に限らず、様々な形で地域と人をつなげるお手伝いをして、日本の活性化に貢献したいと考えています。

2016年5月25日
トレンド総研

 

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