麦わら帽子とワンピース

夏、私は好んで麦わら帽子をかぶります。
熱中症を防ぐためだけではない、
遠いあの日に隠されたその秘密(わけ)――。

――坂道の向こう。群青の空に立ちのぼる入道雲。
海辺から吹き抜ける風が風鈴を傾け、ざわつく木漏れ日に音を添える。
中学最後の夏休み。僕は10年ぶりに祖父母の暮らす田舎にいた。

蝉の音が幾分和らいだ夕方。
村外れにあるバス停辺りを散策していた僕に子犬が駆け寄ってきた。
後を追ってあらわれた少女。
白いワンピースを揺らし麦わら帽子を手で押さえた彼女は
「待ちなさい」と叫ぶ。

「ごめんなさい。うちの子が急に…」

「可愛い子犬ですね」

「この子、人見知りなのに、私以外に懐くなんて初めてです」

彼女は村外れにある屋敷で…

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ファーマーズ・ハイ!
2013.8.3 (19:41)

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